電信柱ブームが来る前に備忘録として書いておこう

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先日、こんなエントリを見た。

 

【イベント告知】明日開催!電信柱と記念撮影しながら歩く会 – ジャンプ力に定評のある前田

電柱楽しかったですか?

2016/10/15 23:21

 

そう、はてなブログに彗星のごとく現れた人気ブロガー「ジャンプ力に定評のある前田」id:meadameadaくんである。
なぜか昨日「電信柱と記念撮影をしながら歩く会」を開催したようだ。

 

僕は京都在住ではないのでもちろん参加はしなかったのだか、僕にとって電信柱、電柱と言うものには特別な思い出がある。

20数年前に電柱建ての助手として、おそらく200本以上の新潟県内の電柱の建柱(けんちゅう)に従事したからだ。

 

pop-people.hatenablog.com

 この話に出てくる会社が倒産後、次の仕事が決まるまでのつなぎにアルバイトとして1年以上建柱専門の電気工事会社に勤務していたのである。

考えてみれば今の前田くんと同じような年の頃の話だ。

彼がこのエントリを読んでくれるとは思わないが、彼の才能がまさかの「電柱ブーム」を予期しているのかも知れないので、こういうエントリーを書いておけば後々もしかすると検索流入がガッポリと・・いや、そんな邪な気持ちではなく、自分の若かりし日の「電柱の思い出」をこの機会に記しておこうと思う。

注)この話は20数年前の記憶で、当時の立場もアルバイトだということもあり、思い違いなどがあるかも知れない事を承知の上で読んでもらいたい。

 

まず、電信柱(以下、電柱)の建柱について。

 

まず、電柱をどこに建てるか決めるのは当地だと東◯電力、またはその下請けの子会社「ユ◯◯ック」。そのどちらかの指定した場所に穴を堀り、電柱を建てていく。

 

使用する機材は建柱車 全てコンクリートの電柱のときにはコレがないとどうにもならない。

簡単に説明すると穴を開けるためのドリルとクレーンの付いた作業車である。

この車に親方(社長)と作業者2人の3人で移動する。

これが建柱車。(穴掘り建柱車とも言う)下に向いているドリル(アースオーガ)を地面に回転させてめり込ませ、そのまま上に引き抜くと溝の中に土が入っているのでそこが穴になる。それを数回繰り返し、建てる電柱によるが、深さ1.5mほどの穴を掘る。

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画像出典:carsensor

掘る場所が道路などのアスファルトの場合は削岩機で崩し、取り除いてからの作業となる。(国道はものすごくアスファルトが厚くて辛い)

穴を掘る場合、畑の様な土だと楽だが、粘土状だとアースオーガにまとわりつくので、いちいちスコップで取り除かなくてはならないし、石だらけだと弾かれて穴がうまくあかない。

かと言って、砂(海沿いなど)だと穴が掘った脇から崩れてくるなど、単純そうに見えて素人が思うほど簡単な作業ではないのだ。

穴を掘ったら、アースオーガをしまいクレーンで電柱を吊ってその穴に入れ込む作業に入る。

14mもある電柱なのでこれもなかなか大変な作業である。
寝ている電柱を起こすのだが、なるべく垂直まで立てないと穴に入れられないのでクレーンの作業者(親方)の指示と熟練のクレーンのテクニックが必要になる。

 

もちろん住宅街の中でも建てる為、間違っても塀にぶつけたり出来ないのでこの穴に入れる作業はいつも緊張を強いられる作業だった。

穴に入ってしまえば後は各方向から垂直を合わせ、埋め戻して作業終了となる。(本来、倒れ防止のコンクリの土台を取り付ける決まりらしいのだが、この会社は手抜き工事ばかりで省略していた。

ガス、水道管

ちなみに僕が勤務している間に親方が穴掘りで水道管2回破り、都市ガスのガス管を1回傷付けたが、そのような時には近隣住民にも迷惑が掛かるので結構な大事になる。(復旧後も水が濁ったり、ガス管は砂が入ると駄目らしい)

しかし、大概穴を掘る場所を指定しているのは元請けなので、親方は割りと平気にしていた。ガス管のときはいつ引火するかと慣れない僕はビクビクしていたが。

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電柱の移動

僕の勤めていた会社は電柱を建柱車に載せて現場まで運んでいた。

電柱は1本約2トン。建柱車は4トントラックを改造したものだが、穴を掘る道具のアースオーガ、クレーンなどが付いているせいで、最大積載量は500kgとなっていた。しかしこの会社の建柱車はサスペンションの板バネを増やすと言う改造をしてあり、時々電柱を4本積んで現場まで走行していたのである。つまり7.5トンの過積載である。

いつか捕まるのでは?と思っていたのだが、案の定、国道を走行中に交通機動隊のパトカーに止められた。以下やりとり。

警察「これ、過積載ですよね?」

親方「はい。すいません。でも、すぐそこまで移動しているだけ(嘘)なので勘弁して下さい」

警察「そうはいかないよ。とりあえず重量計出すからそこに載せて。」

親方「・・・。」

警察「車検証見せて。」(機械になにやら打ち込む)「これどれくらいあるの?重さ」

親方「7トン(嘘)位ですかね」

警察「は?これ積載量500kgまでだよ。なにかんがえてるの?」

親方「いや、だからほんの少しの移動だけなんで」

警察「まあ、とにかく車を載せて」

警察「・・・・。」(他の警官と話し出す。)「・・・・。」

警察「あのねえ。これ、積載重量に対して重すぎて機械がエラー出ちゃうんだよ。」

親方「はい?

警察「積載オーバーが多すぎて、設置式のちゃんとした機械じゃないと駄目なんだ。20kmくらい先にあるんだけど、・・このまま走らせるわけにも行かないし。」

親方「そうですねー・・・。」

警察「・・・今回は特別に許すから絶対にもうやめてくださいね」

親方「スイマセン。」

僕「(は?まじ?)」

交通機動隊のパトカーには簡易的な重量計しか積んでいないために500kgの積載量に8トンも積むことが想定外すぎで機械がエラーになったのだった。(証明する用紙が印刷出来なかった)

明らかに悪質な過積載なのだが、まさか無罪放免になるとは思わなかった。
警察も面倒だったのか、電力会社の仕事なので半分公共事業のようなものなので多目に見たのだろうか?

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他の電気工事会社の建柱を見かけるときがあるが、そこは建柱車ではなくちゃんと10トントラックなどで移動していたので、この会社が異常だったのだろう。

長さも14mの電柱だと前後3m以上建柱車から飛び出していたように思う。
走行中に飛び出している先端が電線に引っ掛かり、停電を引き起こしたこともあった。

などなど、僕が勤めていたわずか1年程度で結構な頻度でトラブっていた。よくもこんな状態で仕事を打ち切られなかったものだと今でも不思議でならない。

工賃

工賃は1本に付き約10万円とのことだった。新しい道路沿いに連続的に建てる工事の場合、一日10本以上建てる事が出来るので儲かると言えば儲かるのかも知れない。

しかし、移動に10トントラックを使う、交通警備員を雇う、など、違法な行為をやらないまっとうな会社では1年間でならすとそれほど儲けはなさそうである。(真冬は雪の為に仕事が少ない)

 

一年ほど勤めた頃、親方は高齢ということもあり、僕にアルバイトではなく社員になって、この仕事を覚えて代わってもらいたいと言う話があった。

給料もそれなりだったが、あまりにリスキー&イリーガルだった為丁重にお断りし、その後早々にこの仕事を辞めた。

 

この様に何気なく建っている電柱にもドラマ?があるのである。

出来れば前田くんが電柱と記念撮影をして歩く前にこの事を伝えることが出来れば、少し違う見え方もしたのかも知れないと思うと少し残念な気持ちもある。

もしまた同じイベントを行う時には一本毎に「この電柱にはどんなドラマがあるんだろ?」と、そんな事も考えてもらえるとうれしい。

 

PVの少ない日曜日にはじめての3000文字のエントリ。なんてこった。

 

でわ。

 

日常

Posted by megane